この記事は、『なぜ成功者は瞑想をしているのか?~マインドフルネス瞑想とは~』というテーマの一部で、「自己肯定感を高めること」に着目しています。「自己肯定感とは何か」やマインドフルネス瞑想との関係について解説しています。
自己肯定感とは何か
「自己肯定感」について、この数年で多くの講演家、心理学者、カウンセラー、YouTuber等が発信をしています。この自己肯定感が着目されるようになった一つのきっかけは、心理学者アドラーの『嫌われる勇気』という本が流行った時からでしょう。
ここで、心理学の効果というものが再認識され、これまで、セラピーやカウンセリングで活用されていたハードルが高かった理論が、実は日常の幸福感にもつながっていることに気づき、広く応用されるようになっていきました。
自己肯定感とは、自分を肯定できる感情のことを指します。その感情が高ければ自信が出て幸福感も増し、反対にそれが低ければ、自信を持てず、不幸感覚が強くなると言われています。しかし、ここで注意しなければならないことが2点あります。
1点目は、肯定する対象の「自分」とは何か、ということです。それが、もし一生懸命頑張っている自分を人が褒めてくれたので、自分でもそう思えて、自己肯定感が高まった場合があったとします。それはとても嬉しいことではありますが、その頑張りが、「ありのままの自分」や「本当の自分」から頑張って離れた時のみ、褒められたということであれば、それは達成感であり、自己実現の喜びとなります。
一方で、自己肯定感の「自己」とは、「ありのままの自分」であり、そのままの「存在としてのあなた」を認めて、許しているという感情に根ざしています。その場合、何かを一生懸命にできた自分は素晴らしくて、できない自分はだめだ、とはならず、恒久的な幸福感や心理的安全性を高めるものになっていきます。
2点目は、自己肯定感と自慢の違いについてです。適切に自分を肯定し(それを愛するとも呼びますが)、自分に対する満足感を持つことはとても重要ですが、それが行き過ぎると自慢の心になってしまい、「そうはなりたくない」と思い、自己肯定感が高まらない方もいます。これは、自慢をしたいという衝動の原因を考えてみれば良いでしょう。
すなわち、自慢をしたい、という感情は、いわゆる「承認欲求」です。他者から認められたい、人からすごいと思われたい、自分の幸不幸を人の評価に定めている状態です。
それは、自己肯定感ではなく、「他者からの肯定感」です。つまり、自己肯定感とは、他者との比較ではなく、自分の内面における正当な自分を認め、自分の立脚点を確固たるものとして認識することであり、自慢とは全く異なります。
自信が持てない原因とは
自己肯定感の高低で自信が決まると前述しましたが、自分に対する自己評価の基準が他人にある場合、これは長らく満たされることはないでしょう。なぜなら、常に人の評価というビタミン注射を打たないと栄養失調になってしまう状態であれば、継続することが難しいからです。しかし、必要な栄養素は体内でも作ることができるように、自分に対する評価は自分で決めることができます。
よく、「根拠のない自信」という言い方があります。私が以前に住んでいたアメリカでは、日本から移住をしたての私には、多くの人が根拠なく自信を持っているように見えました(失礼な言い方ですが・・・)。
それには環境の違い、文化の違い、言語の違いもありますが、「まずやってみる」「自分の行動が未来を作る」「自分の人生に責任を持つ」という精神が根付いているのを感じました。自然環境の激しい土地や開拓者の国においては、こうした風土が根付き、自信があろうが、なかろうが、やってのけることが大事なのだ、というフロンティアスピリットが宿っているのでしょう。
そのように、自信には根拠が必要ない、とも言えます。
さらに、自信が湧かない理由として、未知への恐怖、すなわち経験知の不足ということもあります。人は、慣れたことや経験したことは、先が見えているため、自信を必要とせずにチャレンジすることが可能になります。
その意味で、アスリートなどにとっては練習、練習、練習と言われますが、社会で働く人にとっては、新しい知識や経験を積むことが、自信ある行動に繋がっていきます。
人間の3つのタイプとは
新しいことにチャレンジするときに、よく人は3種類に分かれると言います。
一人目は、石橋の上を叩いて渡る人。いわゆる慎重な人です。
二人目は、石橋の上を普通に渡っていく人。勇気のある、チャレンジ精神に溢れた自信を持っています。
三人目は、石橋を叩いて、引き返す人です。石橋を叩いて、硬そうだなと思っても、心配事の渦に巻き込まれ、やはりやめておこうと引き返してしまう人です。この場合、人生は同じ場所をぐるぐると回ってしまいますし、新しい見地から、新しいビジョンを見るという人生の醍醐味を味わえなくなってしまいます。
上記の三者の違いを決めているのは何でしょうか。
一つは、判断力です。一人目は、石橋が安全なことを叩いて確認した。二人目は、瞬時に叩かずとも確認した。三人目は、叩いただけでは確認できず、おそらく構造計算やそれに伴うエビデンスがなければ信じられない、ということでしょう。
そして2つ目の違いは、自分の判断に自信や確信を持っているのか、否かの違いです。
一人目は、自分で叩けば安全を確認することができました。二人目は、自分の判断を信じ、判断しました。三人目は、自分が叩いたことでは確認できず、その判断を他者に委ねようとして見受けられます。
すなわち、こうした判断の背景には、自信の有無があり、その元には、自分で自分をどの程度肯定できているか、という自己肯定感が存在しているのです。
セルフイメージの影響
自己肯定感は、自分のセルフイメージと非常に密接に関係しています。
セルフイメージとは、「自分はたたき上げで、苦労して成功してきた。それが自分である。」「私は、何度も失恋をしていて、恋愛が長続きしない人です。」「私は、過去そんなに成功体験がないので、ほどほどの自分である。」など、自分の過去の体験やその時に感じた自分への認識が固定化されたものです。
このセルフイメージは、各人の判断や行動を決めていきます。前述したように、自分に確信がある人なら、それ相応の判断力や行動をし、自分に自信がなかったら、そもそも判断ができない、また行動に移すことができない、ということもあります。
セルフイメージを自分が実現したいことに相応しいものにすることで、実現が加速していくのです。その時に、セルフイメージを支えてくれるのが自己肯定感です。
自己肯定と自己卑下
自己肯定の反対は、自己卑下です。自分を肯定する代わりに、自分を卑下、つまり大したことがないと思ってしまうことです。
人生に素晴らしい出来事を起こしていきたいならば、自らの潜在意識から自己卑下を追い出して、適切な自己肯定感を持つことが大切です。
よく謙虚さと自己卑下を混同してしまうこともあります。謙虚さとは、本来、素晴らしい自分が決して偉ぶらずに、誰に対しても公平に接し、周囲に対して配慮している姿勢であるのに対し、自己卑下は、そもそも自分を素晴らしいと思えない心境のことです。
前者の謙虚さは、これから未来にさらに素晴らしいことを成し遂げていきたいという成長の余力があるのに対し、後者の自己卑下は、自分の未来を信じることができなくなっている状況です。
判断や行動を後押しするセルフイメージはとても大切ですが、さらにそれを支える自分への思いを、ポジティブにしていくことが自己肯定感を持つということです。
自尊心の大切さ
人生にはいろいろな出来事があります。良いことばかりではなく、不合理なことや、不可避な嫌な出来事もあります。人から嫌な言葉を言われたり、評価されたりします。
つまり、人生は放っておけば、自己卑下になるようにできているのであり、努力して自分の良いところを見つけるとともに、自分を守る技術を身につける必要があります。
その守るべきものが自尊心です。人は、何をしたから存在意義があって、何を持っているから価値ある人で、という外形的な価値観で人の価値が決められることもありますが、決してそれだけで人間の価値が決まるものではありません。
人は生まれながらに尊いという、生存権を持っており、全ての人に幸福の追求という自由があります。
自分は何ができて、何ができないから、こういう価値である、と自分を決めるのではなく、自分はこの地球上でたった一人の個性を持って、今、社会を構成している一員である、という点において尊いのです。
だからこそ、どのような環境、どのような立場にあろうとも、根本的な自尊心を常に持ち続ける必要があります。その根源的な自尊心が自己肯定感にガソリンを与え続けてくれるのです。
自己肯定感を高める方法とは
自尊心を取り戻す
この自己肯定感を高めるためには、第一に、前述の根本的な自尊心を思い出す必要があります。外形的な環境や、人や環境のモノサシで自分を図るのではなく、誰に何を言われようとも、人間として生きていること自体が尊いというものの見方をすることです。
劣等感を払拭する
第二は、自己肯定感が高まらない原因として、人の言葉や人との比較によって、劣等感を感じている部分を払拭するということです。人との比較によって、幸不幸を決めている間は、ほぼ永遠の比較ループの世界に入ります。過度な優越感、過度な劣等感ではなく、適度な達成感と、適度な自助努力の可能性を感じることです。
幼少期の体験を修正する
第三は、特に幼少期の体験を振り返り、記憶を修正していくことです。自己肯定感は、実は過去の家庭環境や両親、友人、教師などの言葉が影響しています。小さい頃に怒られてばかりの子供だったら、引っ込み思案になってしまうのと同じです。その記憶を修正していくということは、現在ただいまを満たされた感情に切り替え、現在が満たされているのであれば、「終わりよければ全てよし」「結果が過去を決める」と言われるように、全てはこのためだったんだと、過去のネガティブな体験がポジティブなものへと変わっていきます。
感謝の実践
第四は、感謝の実践、愛の実践を行うことです。人が本当に自分を認められる時というのは、人の役に立って、それが現実的に評価された時です。人の役に立つこととは、言い換えれば、与えるということであり、愛の実践です。人に良かれと思って、優しい行いをすることです。その時に自分の心は、自分のこと以上に与えられる「余裕」「富裕感情」を感じることとなり、充足感を感じるのです。同様に、与えられていることを思い出し、感謝するということも、この「余っている」感情を想起させていきます
部分的な優位を作る
第五には、局所戦で優位感を感じることです。前述の与えることに比べると少し排他的になってしまいますが、全てにおいて人より満たされていないと自己肯定感を感じない、というのではなく、この部分では満たされている、ここに絞れば自分は恵まれている、などとテリトリーを絞って、恵まれていることを再認識することです。こうすることで、いわゆる「足ることを知る」ことができ、自分への充足感が高まっていくのです。
Googleの創業者エリック・シュミットは次のように語っています。
ゼネラルマネージャーと聞いて誰もが頭に浮かべるイメージは、今の世の中の動きに適っているとは思えません。これからのマネージャーは何かが得意であれば良く、そこから学んでいけばいいのです。どこからスタートしても構いませんが、何かひとつ、特に秀でているものを持っている必要があります。あとはそこからスキルを広げていけばいいのです。
『世界を変えた31人の人生の講義』
自己肯定感を高めるマインドフルネス
自己肯定感を高めるためには、マインドフルネス瞑想もおすすめです。
ただ、いつも自分に対して自信が持てなかったり、自己卑下して、ぐるぐると考えてしまったりする時には、あまり考え込まず、十分にストレスを開放する瞑想準備の時間をとってから行うことが大切です。
- まず、静かな音楽をかけてリラックスし、椅子に腰掛けます。
- 深呼吸をして、静かな何もしない時間を自分に認めてあげます。
- 十分にリラックスしたら、最初に自分を貶めている言葉を発見します。
- 自己肯定感を低めている、頭の中の言葉があるはずです。
- その言葉が何であるのかを考えます。
- それを見つけたら、トゲを抜くように、自分から引き離すイメージをしていきます。
- その刺さっていた言葉を客観的に見つめ、次第に頭の中から消えていくまで、静かな心を保っていきます。
- 次に、自分が与えられているものを心の中でリストアップします。
- 小さなことでも見逃さず、人生の中でよかったこと、感謝すべきことを見つけていきます。
- そして、与えられていることを感じたら、それに感謝します。
- 最後に、新たな自己イメージを潜在意識にすり込んでいきます。
- なりたい自分、理想の自分をありありとイメージします。
- そして、その自分が動き始め、理想の自分が発している言葉、行動、振る舞いを、これからの目標として取り組んでいきます。
以上が、自己肯定感を高める基本的なマインドフルネス瞑想の段階です。
これらは実際に音声誘導にて瞑想を行うことをおすすめします。
メディテラスのYouTubeチャンネル、ポッドキャストでは、さまざまな誘導瞑想を配信していますので、ぜひそちらもご覧ください。